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かもめダイアリー

画:植木まみすけ http://mm9.hatenablog.com/

第5話「ややこしい二人」3

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 今日も今日とて柚葉は早起きして一人、乙女坂を上っていた。柚葉が早起きをするようになってから四日。全ては図書室に一番乗りして張り込みするためである。気になったらとことんの柚葉に遊莉と晴は「乙女の狂気」とでも言うべき何かを感じて、柚葉のさせるがままにしていた。というか、関わったらやばそうなので何も言えなかったのである。 今までほぼ毎日三人揃って食堂で朝ごはんを食べていたはずなのだが、柚葉が張り込みを始めてからというもの、食堂には遊莉と晴の二人きりである。

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第5話「ややこしい二人」2

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 それから数日後の昼休み、また柚葉は図書室で西田を目撃した。西田が入ってきたのに気づくなり、柚葉は図鑑や百科事典の棚の陰にしゃがんで隠れた。幸い室内には柚葉の他に生徒はおらず、榎はカウンターにいなかった。

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第5話「ややこしい二人」1

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「……」
 一限が終わるなり、柚葉はふらりと晴の席の後ろに立つと、無言で晴の肩を掴んだ。晴が「ひゃわっ!?」と飛び上がる。
「わ、びっくりした……ゆず、どうしたの?」

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第4.5話「はじめてのいそけん」

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 いつものように朝の校門をくぐり外階段をのぼり教員室前を通りすぎたとき、柚葉たちは物々しい光景にぎょっとした。
 廊下の真ん中にポールが置かれ二列に区切られている。混雑する廊下を動き回っているのは一分の隙もなくびしっと制服を着こなした生徒会員たちだった。

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第4話「My favorite things」3

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 柚葉はびっくりしてしばらく目の前の顔を見つめていた。――遊莉の顔を。
 遊莉も少しびっくりしていた。そして少し呆れた風に言った。
「……あんた、何やってんのそこで」

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第4話「My favorite things」2

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 その次の授業から曲に合わせての発声練習が始まった。
「オペラ歌手がみんな太ってなきゃできないなんてありえない。発声を正しく行えば体は自然と痩せるもの。声は遠くに飛ばすの。そして、響かせる。それだけ」
 境は真っ先にそう言った。

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第4話「My favorite things」1

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 かもめ寮302号室。二段ベッドの二階、枕元のデジタル時計が「7:00」になったとたん、ベッドフレームに引っ掛かけていたヘッドホンから澄んだ歌声が響き出す。 

 そこに何があるとしても 未開の領域へ君と……

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